朝日新聞から
遅くなりましたが、11月12日付け朝日新聞を紹介します。
引用元 https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20211112001350.html
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手話と字幕どう違う?聴覚障害者への伝え方、政見放送で各党分かれる
衆院選の選挙期間中に流れたテレビの政見放送では、聴覚障害者に政党や候補者の情報を伝えるために、手話通訳や字幕による説明も行われた。当事者団体は、手話は日本語とは別の言語であり、手話を母語とする人は字幕が理解しづらいと指摘。手話通訳と字幕の両方をつけるよう求めているが、小選挙区では字幕に限る政党もあるなど、対応は分かれた。
政見放送は、放送局で収録する従来の「スタジオ録画方式」に加え、衆院選の小選挙区と参院選の選挙区では、候補者が独自に収録した映像を流す「持ち込みビデオ方式」を選べる。
今回の衆院選でも、小選挙区は「持ち込み方式」を選べば手話通訳と字幕がつけられたが、スタジオで録画する比例区では字幕は認められなかった。総務省は「字幕をつける設備が整っていない放送局もあるため」と説明する。
党首らの説明部分、3政党が手話も字幕も
小選挙区について、公明党とNHK党を除く7政党は党首ら代表が話す共通部分と、各選挙区の候補者を紹介する部分で構成した。候補者部分は、同じ政党内でも選挙区ごとに手話と字幕、手話だけ、字幕だけなど対応が分かれた。
共通部分は7政党すべてが字幕をつけた一方、手話通訳は立憲民主、共産、国民民主の3政党にとどまった。
共通部分に手話と字幕をつけた理由について立憲民主党は、「公共性のあるものなので、多くの方に見てもらえるようにした」と説明。手話言語法の制定を推進する立場もあって通訳をつけたという。
共産党は、「聴覚障害者の中にも手話がわかる人とわからない人がいる。政策を伝えるには両方必要だ」と話す。国民民主党は「手話が良い人もいれば、文字がいい人もいる」。色覚障害があっても見やすいように、字幕の色の組み合わせにも配慮したという。
共通部分に手話通訳をつけなかった理由について、自民党は「聴覚障害者には字幕で対応している。手話を軽んじているわけではない」と述べた。日本維新の会は「配慮して字幕をつけている。手話通訳をつけていない明確な理由はない」とする。
れいわ新選組は、「字幕の漢字部分にルビを振り、より多くの方々に内容を理解いただけるよう作成した」と文書で回答。社民党は「スケジュールの都合で手話通訳士が見つけられなかった。字幕は一字一句つけた」と説明した。(寺尾佳恵)
手話の文法、日本語と異なる 使用禁止された人も
当事者団体の全日本ろうあ連盟は、手話通訳士らの団体とともに聴覚障害者の参政権を保障するため、「衆議院、参議院、都道府県知事選挙のすべての政見放送に手話通訳及び字幕を義務づける」ことを総務省に求めてきた。ただ、総務省は「公職選挙法に基づき、政党、候補者が任意で決めるもの」との立場で実現していない。
連盟の情報・コミュニケーション委員会の中西久美子委員長(58)は今回の政見放送を見て、「聞こえない当事者として参政権が保障されているとは言えない。字幕だけの政党があったのは非常に残念」と手話で話した。
手話は2006年に国連が採択した障害者権利条約(日本は14年に批准)で言語として定義され、国内でも11年の障害者基本法の改正によって言語と位置づけられた。手や指の形や動きだけでなく、表情も含めて意味を伝え、日本語とは異なる文法体系を持つ。しゃべっている言葉を手話で表すのは、日本語を英語に訳すような感覚だ。
聴覚障害者の中にも、母語として手話を身につけた人もいれば、学校で手話が禁止され手話を学ぶ機会がなかった人もいる。手話の方が理解できる人もいれば、文章の方が良いという人もいるため、中西さんは「手話通訳も字幕もどちらもつけることが重要だ」と強
調する。
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